インフラエンジニアのナカキです。
今月も重要なITインフラ関連のニュースをお届けします。まず、AnsibleとAWSによるセキュリティ強化について解説します。また、開発者向けセルフサービスの最新動向もご紹介します。さらに、機密コンピューティングやネットワーク自動化といった注目技術も取り上げました。企業向けAI基盤の構築方法についても詳しく説明します。
1. AnsibleとAWSによる安全なネットワークセグメンテーション
概要
Red Hat AnsibleとAWSを活用した、安全なネットワークセグメンテーションの自動化手法が紹介されました。amazon.aws 9.0.0コレクションの新機能を使用することで、Transit Gateway、VPCアタッチメント、Network ACLの設定を効率的に自動化できます。
この手法では、3つのステップで実装を進めます。まず、Transit Gatewayを作成してVPC間の接続を一元化します。次に、VPCをTransit Gatewayにアタッチして通信を可能にします。最後に、Network ACLを設定してサブネットレベルでのトラフィック制御を実現します。
押さえるべきポイント
- 3ステップ自動化: Transit Gateway作成→VPCアタッチ→Network ACL設定の順序で進める
- セキュリティと接続性の両立: 複数VPC間の通信を確保しながら、強固なセキュリティ制御を実現
- amazon.aws 9.0.0の新機能活用: 最新コレクションの機能でクラウドネットワーク管理を大幅簡素化
- 手動作業の削減: 自動化により運用ミスを防止し、スケーラブルなインフラを構築
出典: 3 steps to secure network segmentation with Ansible and AWS | Red Hat Developer
2. Backstageを使った開発者セルフサービスの実装
概要
Red Hat Developer HubとOpenShift GitOpsを組み合わせた、開発者向けセルフサービス環境の構築方法が発表されました。BackstageのSoftware Templatesを活用することで、開発者は複雑なKubernetesマニフェストを直接操作することなく、アプリケーションの作成からデプロイまでを自動化できます。
このソリューションでは、GitOpsベースのアプローチを採用します。具体的には、App of Appsパターンを使用して承認プロセスを含むデプロイメントを実現します。開発者はSoftware Templateを使用してソースコードとマニフェストを生成し、その後別のテンプレートでデプロイメントを要求します。
押さえるべきポイント
- 2段階のセルフサービス: コード生成→デプロイ要求の流れで開発者の認知負荷を軽減
- GitOps統合: Argo CDとの連携で自動的なCI/CDパイプライン構築を実現
- 承認プロセス内蔵: プルリクエストベースでセキュリティとコンプライアンスを確保
- 標準化の促進: プラットフォームチームが作成したHelmチャートで統一されたデプロイメント
出典: How to implement developer self-service with Backstage | Red Hat Developer
3. OpenShift Virtualizationでの機密コンピューティング
概要
Red Hat OpenShift Virtualizationにおける機密コンピューティング(Confidential Computing)技術の実装方法が紹介されました。Intel TDXやAMD SEV-SNPといったハードウェアベースの信頼実行環境(TEE)を活用することで、仮想マシン内のデータを使用中でも保護できます。
この技術では、Hook Sidecarを使用してSEV-SNP機能を有効化します。また、Trusteeアテステーションサーバーを活用した検証フローにより、仮想マシンの起動時に環境の信頼性を確認してからワークロードを実行する仕組みを実現しています。
押さえるべきポイント
- 3つの保護レベル: 機密性・完全性・証明により包括的なデータ保護を実現
- ハードウェアベースのセキュリティ: Intel TDXとAMD SEV-SNPで信頼実行環境を構築
- アテステーション機能: Trusteeサーバーによる環境検証で不正な実行を防止
- マルチテナント対応: 第三者インフラでも機密データを安全に処理可能
出典: Enable confidential computing in OpenShift Virtualization | Red Hat Developer
4. すべての組織が導入すべき4つのネットワーク自動化ユースケース
概要
企業ネットワークの複雑化に対応するため、全組織で導入すべき4つの基本的なネットワーク自動化ユースケースが提示されました。ネットワークファクト収集、レポート生成、バックアップ、設定変更の自動化により、手動作業によるエラーを削減し、運用効率を大幅に向上させることができます。
これらのユースケースは、Cisco IOSを例に具体的な実装方法が示されています。また、IDCの調査によると、自動化を導入した企業では38%のネットワーク管理効率向上が報告されており、実際のビジネス価値が証明されています。
押さえるべきポイント
- 4つの基本ユースケース: ファクト収集→レポート作成→バックアップ→設定変更の段階的導入
- リスクの最小化: 読み取り専用操作から始めて段階的に自動化範囲を拡大
- 効率向上の実証: IDC調査で38%の管理効率向上を確認済み
- ワークフロー統合: 個別タスクを組み合わせて包括的な自動化を実現
出典: 4 essential network automation use cases for everyone | Red Hat Developer
5. 企業向けModels-as-a-Service(MaaS)の6つのメリット
概要
企業でのAI導入において、Models-as-a-Service(MaaS)アプローチの重要性が強調されました。MaaSは、GPU管理の複雑さを抽象化し、開発者がAIアプリケーション開発に集中できる環境を提供します。これにより、コスト削減と開発速度向上を同時に実現できます。
従来の課題である高額なGPUコスト、パブリックモデルのセキュリティリスク、専門知識不足に対して、MaaSは包括的な解決策を提供します。Red Hat OpenShift AIと3Scale API Gatewayを組み合わせることで、スケーラブルで安全なAI基盤の構築が可能になります。
押さえるべきポイント
- 6つの主要メリット: 複雑性軽減・コスト削減・セキュリティ向上・開発速度向上・運用制御・選択の自由
- 内部ホスティング: オープンソースモデルの活用でベンダーロックインを回避
- 一元管理: ITがサービスプロバイダーとなりAIリソースを効率配分
- 標準化とアクセシビリティ: 組織全体でのAI開発フレームワーク統一
出典: 6 benefits of Models-as-a-Service for enterprises | Red Hat Developer
まとめ
今月は、自動化とセルフサービス化の推進により、インフラエンジニアがより戦略的な業務に集中できる環境が整いつつあります。特に、セキュリティ強化と開発者体験向上の両立が重要なテーマとなっています。
また、機密コンピューティングやMaaSといった新しい技術領域も注目されています。そのため、これらの技術は今後のインフラ運用に大きな変化をもたらすでしょう。さらに、企業のデジタル変革を加速させる重要な要素となることが期待されます。
以上が今月のニュースのまとめになります。週次でも更新しているのでぜひご覧ください!ご購読ありがとうございました!
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