最終更新: 2026年3月
2026年3月現在、Zabbixには複数のアクティブなバージョンが存在する。長期サポートの7.0 LTS、最新安定版の7.4、そして開発中の次期LTSである8.0。どのバージョンを選ぶべきかは、組織の運用方針や必要な機能によって異なる。
本記事では各バージョンの特徴と差分を整理し、環境に応じた選定基準を示す。
Zabbix リリースサイクルの基本
Zabbixのリリースポリシーを理解しておくことが前提となる。
- LTS(Long-Term Support): 約1.5年ごとにリリース。フルサポート3年 + 限定サポート(セキュリティ・クリティカル修正のみ)2年
- Standard(標準リリース): 約6か月ごとにリリース。フルサポートは次の安定版リリースまで + 限定サポート1か月
つまり、LTS版は安定運用向け、Standard版は新機能をいち早く使いたい環境向けである。
現在のサポート状況(2026年3月時点)
| バージョン | 種別 | リリース日 | フルサポート終了 | 限定サポート終了 |
|---|---|---|---|---|
| 7.0 | LTS | 2024年6月 | 2027年6月 | 2029年6月 |
| 7.2 | Standard | 2024年12月 | 2025年6月(EOL済み) | 2025年12月(EOL済み) |
| 7.4 | Standard | 2025年6月 | 8.0リリースまで | 8.0リリース後1か月 |
| 8.0 | LTS(予定) | 2026年Q4予定 | 2029年予定 | 2031年予定 |
7.2は既にEOLを迎えている。7.2を運用中の場合は7.0 LTSまたは7.4への移行を検討する必要がある。
Zabbix 7.0 LTS — 安定運用の基盤
Zabbix 7.0 LTSは2024年6月にリリースされた現行のLTS版であり、2029年6月まで限定サポートが継続される。企業の本番環境で最も広く採用されているバージョンである。
主要な新機能(6.0 LTSからの進化)
監視機能の強化:
- ブラウザベースのシナリオ監視(Synthetic Web Monitoring): ヘッドレスブラウザを使った実際のユーザー操作をシミュレート
- Zabbix Proxy高可用性とロードバランシング: Proxy Groupによるクラスタ構成
- 非同期ポーラーによるメトリクス収集のスケーラビリティ向上
- アイテム単位でのタイムアウト設定
認証・セキュリティ:
- ネイティブMFA(多要素認証): TOTP / Duo Universal Prompt
- JIT(Just-In-Time)プロビジョニングの改善
可視化:
- ダッシュボードウィジェット間通信フレームワーク
- ゲージウィジェット、パイウィジェットの追加
- マルチページダッシュボードのレポート対応
LLD(ローレベルディスカバリ):
- VMwareやKubernetes環境での複雑なホスト構成の自動発見改善
こんな環境に向いている
- 本番環境で長期間安定して運用したい
- 5年間のサポートが必要
- 新機能よりも安定性を重視する
- 社内規定でLTS版の使用が義務付けられている
Zabbix 7.4 — 最新機能をいち早く
Zabbix 7.4は2025年6月にリリースされた標準リリースで、7.0 LTSをベースにさらなる機能拡張が行われている。
7.0 LTSからの主な差分
ネストLLD(Low-Level Discovery): 7.4の最大の目玉機能である。従来のLLDでは1階層のオブジェクト発見しかできなかったが、7.4ではディスカバリルール内にさらにディスカバリプロトタイプを定義できる。
例えば、以下のような多階層の自動発見が可能になった。
- データベースサーバー → 各DBインスタンス → テーブルスペース → テーブル
- ハイパーバイザー → 仮想マシン → コンテナ
ネストの階層に制限はなく、複雑な環境の自動監視構成が劇的に簡素化される。
フロントエンドとサーバー間のTLS暗号化: Zabbixフロントエンド(Web UI)とZabbixサーバー間の通信を暗号化できるようになった。従来はこの間の通信は平文であり、セキュリティ要件の厳しい環境では課題となっていた。
OAuth 2.0対応: メール通知のSMTP認証でOAuth 2.0をサポート。GmailやMicrosoft 365をメール通知のSMTPとして使う場合、ウィザード形式でOAuth認証を設定できる。
その他の改善:
- マップの背景画像自動スケーリング
- マップのラベル自動非表示(OK状態のとき)
- icmppingretry: ICMP疎通チェックのリトライ回数指定
- PHP 8.4対応
- インラインフォームバリデーション
- ウィジェット設定のリアルタイムプレビュー
- 新しいテンプレート: Juniper MX(NETCONF)、Azure MSSQL DTU、Pure Storage FlashArray、Proxmox VE(ディスク使用率)
こんな環境に向いている
- 検証環境や開発環境
- ネストLLDが業務上必要(複雑なDB環境やコンテナ環境)
- フロントエンド-サーバー間のTLS暗号化がセキュリティ要件として必須
- 次期LTS(8.0)へのスムーズな移行を見据えた事前検証
Zabbix 8.0 LTS — 次世代の監視プラットフォーム
Zabbix 8.0 LTSは2026年Q4に予定されている次期LTS版である。2026年3月時点ではalpha2がリリースされている段階で、本番環境での利用は推奨されない。
ロードマップ上の主要機能
OpenTelemetry対応:
- OpenTelemetryデータの収集と可視化
- トレーシングデータに特化した新しいビュー
- 大量のトレース・ログ・時系列データに最適化された新ストレージエンジン
ネットワーク監視の強化:
- NetFlowデータの収集と可視化
- 主要ネットワーク機器ベンダーからのリアルタイムストリーミングプロトコル対応
- 自動ネットワークトポロジ発見と可視化
その他:
- ログベースのオブザーバビリティ
- カスタムインベントリフィールド
Zabbixは公式に「従来の監視ツールからフルオブザーバビリティプラットフォームへの進化」を掲げており、8.0 LTSはその方向性を本格的に具現化する最初のバージョンとなる見込みである。
注意点
- まだalpha版であり、機能は変更・削除される可能性がある
- 本番環境には絶対に使用しない
- テスト環境での機能検証は可能
バージョン別機能比較表
| 機能 | 7.0 LTS | 7.4 | 8.0 LTS(予定) |
|---|---|---|---|
| LLD(ローレベルディスカバリ) | ○ | ○ ネストLLD対応 | ○ |
| Proxy HA / ロードバランシング | ○ | ○ | ○ |
| MFA(多要素認証) | ○ TOTP/Duo | ○ | ○ |
| ブラウザベースWeb監視 | ○ | ○ | ○ |
| フロントエンド-サーバー間TLS | × | ○ | ○ |
| OAuth 2.0メール認証 | × | ○ | ○ |
| OpenTelemetry | × | × | ○(予定) |
| NetFlowデータ収集 | × | × | ○(予定) |
| 自動ネットワークトポロジ発見 | × | × | ○(予定) |
| PHP 8.4対応 | × | ○ | ○ |
| サポート終了 | 2029年6月 | 8.0リリース後1か月 | 2031年予定 |
結論: どのバージョンを選ぶべきか
本番環境 → Zabbix 7.0 LTS
迷ったら7.0 LTSを選ぶ。2029年まで限定サポートが継続され、企業環境で最も安定した選択肢である。7.4以降の新機能が必須でない限り、7.0 LTSで十分な監視環境を構築できる。
検証・開発環境 → Zabbix 7.4
最新機能の検証やネストLLDの評価が目的であれば7.4を選ぶ。ただし、サポート期間が短い点に注意が必要であり、8.0 LTSリリース後は速やかにアップグレードする計画を立てておく。
待機 → Zabbix 8.0 LTS
OpenTelemetry対応やNetFlow機能が業務上必要であれば、8.0 LTSの正式リリースを待つ。それまでは7.0 LTSで運用し、8.0のリリース後にアップグレードするのが最も合理的なパスである。
本記事は2026年3月時点の情報に基づいている。Zabbix 8.0 LTSのリリーススケジュールおよび機能は変更される可能性がある。最新情報はZabbix公式サイトを参照していただきたい。

